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外来処置(日帰り手術)とは?
外来で行う、痔の外科的治療です。
基本的に通院で行い、
処置を行った後はすぐ帰れますが、
治療の内容や、受診された病院によっては、
処置当日~数日間は安静する必要があります。
ちなみに、痔の患者さんのほとんどは、
生活改善と薬の服用、外来処置で治癒するそうで、
入院手術を要する方は、たった1割なのだそうです。
主な外来処置(日帰り手術)を簡単にご紹介いたします。
内痔核(いぼ痔)
・注射(硬化)療法
痔核の根元に直接注射をして、
痔核を固めて縮小させる治療です。
一般的にフェノールアーモンド油(PAO)を用います。
痔核からの出血を止めるのに効果的で、
麻酔もいらず、外来治療にて行えますが、
脱肛するほど痔核が大きくなった場合は、
あまり効果がありません。
数年で再発しやすく、何度も注射療法を繰り返すと、
将来手術に至った時に、
手術が困難になるという難点があります。
最近では「ジオン注(ALTA療法)」と呼ばれる
注射療法が注目されています。
ジオン注(ALTA療法)とは?
硫酸アルミニウムカリウムとタンニン酸を主成分とした薬品を、
一個の痔核に対し4箇所に注射します(4段階注射法)
フェノールアーモンド油を使った従来の方法よりも、
さらに良い効果が期待できますが、
・治療が複雑なため、治療できる医師が限られている
・合併症や副作用がある
・麻酔や入院が必要(保険がきかない病院もある)
など、現段階ではまだリスクも高い治療法です。
尚、外痔核は皮膚表面に近く、
痛みを感じやすいために、注射治療はできません。
・輪ゴム結紮
専門の器具を使って、
痔核の根元を輪ゴムできつく縛ります。
輪ゴムで縛った先の痔核は、
血液が行かなくなるために壊死して、
ポロリと自然に落ちてしまいます。
輪ゴムが止まる大きさの痔核にのみ有効です。
尚、外痔核は皮膚表面に近く、
痛みを感じやすいために、輪ゴム結紮ができません。
痔核を輪ゴムで縛りつけた後、
痔核が壊死してちぎれ落ちる際に、
大量に出血する可能性があります。
そして、痔核がちぎれ落ちた後の傷が悪化して、
最悪は、入院が必要になる事例もあるそうです。
・レーザー療法
こちらは、麻酔を使っての治療となるため、
“日帰り手術”といって、
外来処置と入院手術の中間のような治療になります。
(麻酔が解けるまで、数時間病院にて安静後帰宅)
レーザー光線を使って、痔核を焼き切ります。
痛みや出血、肛門の狭窄や変形が少なく、
回復が早いなどのメリットも多く、
痔核の治療では一般的な治療法です。
レーザー療法には次のような方法があります。
・接触法
レーザー光線を発生するチップ(セラミック製等使用)を
電気メスのように患部に直接当てて
痔核を焼ききります。
患部を正確に切り取る事ができますが、
チップが熱で折れやすいのが欠点です。
・非接触法
痔核に向けてレーザー光線を照射し、焼き切ります。
痔核よりも離して照射するため、
接触法よりも正確性に欠ける難点があります。
ごくまれですが、肛門括約筋を傷つけてしまい、
肛門狭窄などの後遺症に至るケースもあるそうです。
・ICG併用半導体レーザー療法
近年普及しつつある、レーザー療法です。
痔核にICG色素という、レーザー光線を
とても吸収しやすい色素を注入し、
その上から半導体レーザーを当てて、痔核を焼き切ります。
内痔核はレーザー光線を当てても、
なかなか熱が発生しにくいものだそうですが、
ICG色素を注入した痔核にレーザー光線が集中する事で、
その痔核だけを正確に焼き切る事ができ、
出血や痛み、副作用が少なく、
何度も照射できるために最近注目されていますが、
ICG併用半導体レーザー療法は、新しい治療法のために、
症例数がまだ少なく、まだ未解明な点がある事と、
レーザーを照射後の患部が、
しばらく(1~2週間)腫れたりするケースがある事、
外痔核には使えない事…などの難点があります。
外痔核(いぼ痔)
軽度でしたら保存療法(薬と生活改善)で治りますが、
中程度~重度ですと、患部を切開して、
中の血栓(血豆状のもの)を取り出すか、
患部そのものを切り取るしかないとの事です。
中程度でしたら、外来処置でもできますが、
重度だと、入院手術になります。
患者さんの状態によって違いますので、
かかりつけの医師に相談なさるのをお勧めいたします。
裂肛(切れ痔)
排便のたびに肛門が切れるのを繰り返していると、
傷がだんだん深くなって潰瘍となり炎症がおきます。
炎症が肛門内部の括約筋にまで及んでしまうと、
括約筋が硬く緊張した状態になり、
排便の際に広がらなくなってしまい(肛門狭窄)
便が出にくくなったり、細い便しか出なくなってしまいます。
この場合は、「側方内括約筋切開術」といって、
括約筋の左右どちらか一部をメスで切開して、
狭くなってしまった肛門を少し広げてあげます。
処置は1分程度で終わり、外来処置でできます。
そしてこの処置で、肛門の締まりが悪くなったり、
便が漏れたりという事はないそうです。
痔ろう(痔瘻 あな痔)
痔ろうは、薬が効かないため、
治療法は手術もしくは外来処置のみになるそうです。
肛門周囲膿瘍(肛門の周りに膿が溜まっている状態)
を発症している場合は、切開して膿を出します。
肛門内に膿のトンネルができる
「痔ろう」の状態の場合は、
トンネルが浅くて直線状のものなら、
外来処置(日帰り手術)も可能ですが、
トンネルが複雑で肛門内の深い位置にあるときは、
入院手術が必要になります。
開放術式
痔ろうのトンネルがある位置~表皮までを
スパっと切り落とします。
浅いものなら日帰り手術で行え、
患部に肉が盛りあがって回復した後は、
再発もないそうですが、
肛門括約筋を切り取るため、
肛門のしまりが悪くなる欠点があります。
肛門括約筋温存手術(くりぬき法)
開放術式の肛門のしまりが悪くなる欠点を
カバーするために考えられた方法で、
痔ろうによってできた
「膿のトンネル」をくりぬく方法です。
開放術式のように、
肛門括約筋を大きく切り取る必要がないため、
肛門がゆるむ後遺症も少なくて済みますが、
再発する可能性が高い(約30%)のが欠点です。
シートン法
瘻管(化膿によって肛門内にトンネル状に開いた穴)
の入口と出口に輪ゴムなどを通して、
時間をかけて徐々にゴムを締め付けて行って、
膿のトンネルから表皮(粘膜部分)までを
直線状に切って開放させ、
病巣をきれいにして治す方法です。
治療は3~6ヶ月ほどかかり、
患部に輪ゴムを通している間は、
ヒリヒリした痛みが続くのが難点ですが、
再発が少なく(約1~2%)
肛門括約筋もそれほど損傷することのない治療法です。